「…いや、顔色悪ぃな。鳥にリンゴ出したら、俺んとこ来な」
冷凍のパスタあったから。
「……不細工?」
「………顔色、って言ったろ」
明らかに馬鹿にした顔で笑う哲は、私の部屋の合い鍵を携帯に付けている。
シリコンで出来た、赤い十字を象ったキーカバーのが私の部屋。黒いのが、自分の部屋。
私の携帯にも、同じく付けてある。
緑のカエルが私の部屋、赤いカエルが哲の部屋。
まるで付き合っているようで、全然そんなことない。
哲は雪音ちゃんを好きなんだと思うし、私は彼氏なんかいらないし。
「…揚げ茄子入ってるなら食べる」
「あ~…残念。ボロネーゼ」
「揚げ茄子…」
「ねぇっての」
仕方ない…我慢する、と呟いても、哲は気にする風もなく、じゃあ温めておくから、早めに来いよ、と。
伸びた赤い髪を、掻き上げた。

