大丈夫?
痛くない?

…そんな事、言えない。


痛くない訳ないし、大丈夫な訳もない。


哲の膝から力が抜けて、私の方へ揺らぐ。

私は哲の肩を支えて、膝の上で、その上半身ごと抱きしめた。




「蜜…ごめ……血だらけ…」



…声。

哲の、声が、聞こえた。


それが合図だったかのように、いろいろな音が、戻ってきた。


ビニール袋いっぱいに氷を入れて、必死に走ってくる婿様の足音や、私の背後で、全ての機械が止まっているか確認するマモちゃんの気配。

がなるような大声で、救急車に5秒で来てくれ、と言っているシゲちゃん。


すぐ傍で、哲を覗き込むように両膝を付いて、しっかりしろと呟く磯辺さんの、声。


鼓動に合わせて溢れる血が、私の膝に落ちる、音、も。