「蜜、エロジジイはほっといて、行くぞ。200個口のプーリー、早くやんねーと」


思わず胸に伸びかけた手を、哲が掴む。

手をつなぐ、ではなくて、手を掴まれて。


私は200個、という数字に意識を浮上させた。



「そ、だね。婿様も行きましょう」

結構な速度で引っ張られながら、私は振り向いて、婿様を手招く。



どうして大声を上げたのか、そんなことは忘れちゃった方がいいに違いない。


ついでに、ささやかな件も忘れてしまいたい。



「何もされてないのか!?」


まだ言うか。
だからエロジジイって言われるんですよ。



「階段、踏み外しただけですから」


ええっ、怪我はないのか!? と再び血相を変えた婿様は、がっしりとした重たそうな体躯で、濃い立派な髭をたくわえている。

最初に会った時、モミアゲ部の部長だ!!!…と、思ったくらいだ。