幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜




家里のいる座敷の前に座ると、花緒が譲の顔を見て、固い表情でこくりと頷き、座敷の襖を開けた。




まばゆい光が枝分かれに差し込み、譲は頭を下げる。



「ようおいでにならはりました。お逢状をいただいた柚葉どす。今宵は楽しんでおくんなまし」




慣れた挨拶をすませ顔を上げると、すでに出来上がった家里が顔を赤くして、譲を見つめる。




「おう、これはこれは……。胡弓姫は噂に聞く以上に……絶世の美女だな。
どれ、もうちょっと近うよれ」



家里の手招きに引かれるように譲は膝を進めると、突然家里が譲は肩を抱き寄せ、顔を寄せた。




口からの酒臭い臭いに譲は顔をしかめそうになるが、まるで恥ずかしかっている娘を装うかのようにふいっと顔を背ける。





「旦那はん、一体これはなんのおつもりどすか」





小さく尋ねてみると、家里が譲の顎をくいっとあげる。




その目は飢えた獣のようだ。




「俺には今大量に金がある。お前を身請けすることができるほどな」



しめたと、譲は詰め寄る。





「へぇ。うちを身請けできるうことは、相当な大金があるんどすなぁ。一体どうやって?」





身体中に走る嫌悪を我慢して、譲は家里に身体を預ける。




家里はいい気分になっていたのか饒舌だった。





「まあな。芹沢の悪名を使えば、わんさか金がでてくることよ!」




家里が高笑いしてるその時だった。




譲はある気配にはっと目を見張って、神経を尖らせた。




その気配が何であるかを悟り、譲は舌打ちしそうになるのを必死にこらえる。




(今の間で着たら承知しないわよ!家里はまだ素面なんだから!)




しかし、そんな願いは打ち砕かれる。