あちこちでバタバタと足音が騒がしい。
「ったく……何だってんの一体」
障子の隙間から顔を丸々出して外を窺う。
月明かりしかないから暗いかと思ったが、
現代のように余分な光がないからかえって明るかった。
足音に混ざって、叫び声や怒号が聞こえる。
「おいクソ女!」
「………あ?」
振り向くと、黒い着流し姿の土方が手に刀を持ってあたしを睨んでいた。
「顔出してんじゃねぇよ。足手まといは引っ込んでろ!」
「……………」
何コイツ。
マジ腹立つ。
一瞥もくれず通り過ぎた土方を、流し目に睨みながらピシャリと戸を閉めた。

