「練習相手がいないと暇…………ってことで付き合ってよ山崎さん」


持ってた木刀を肩にかけ、後ろを振り向いた。
しばらくしーんとしていたが、やがてフッと落ちてきたように山崎が現れた。


「お前、ホンッマ嫌な奴やな……」

「何言ってんの。バレてる時点で見張りの意味が無いから堂々と面倒見させてあげようとしてるんじゃないですか。なんて親切」

「ほざけ」


嫌そうな顔をしながらあたしを見る山崎。
今日も黒服は健在だ。


「山崎さんだってあたしの見張りばっかしてつまんないでしょ。
体もなまるだろうし。手合わせしてよ」

「確かに……体はなまってるかもな」

「でしょ?相手して」

「…………少しだけやぞ」


口調はしょうがないな、と呆れがちだが、その顔は嬉しそうに嬉々としている。

意外と無邪気なとこあるんだな。


「んじゃ、やろうか」


山崎は木刀を一本取り出すと、片手であたしに向かって構えた。


「りょーかい」


あたしもそれにならって木刀を構える。

山崎じゃないけど、あたしもワクワクしてる。きっとコイツ、強い。


「行くぞ!」

「来い!」


山崎の声に、2人とも同時に床を蹴った。