「それでね、剣道初めて7年経って。
10歳の時、一度目の手術をしよう、って話になったんです」
「そうなのか」
「あたしの時代じゃ、簡単に手術して治せるんですよ。
ただ、両親たちがあたしが幼いから大きくなってからにしてあげようって考えてただけで」
「なるほど」
「それで、手術の日が決まって、あたしの目は治るはずだった」
「…………」
少し俯いて、左目に手をやる。
目尻をツツ、となぞると、微かに指に感じる違和感。
「でもね、結局 手術はしなかった。
あたしが拒んだんです」
「どうして?」
「……怪我、したんです。手術予定の一週間前に」
コレ、と指で傷跡をさす。
永倉は少し眉を寄せて、遠慮がちにあたしを見てくる。
「………前から思ってたけど、この傷跡、どうしたんだ?
結構深手だったろう、これ。跡が残る程だ」
「まぁ、それなりに。これ、殴られたんです。近所の男の子に、金属バットで」
「殴られた?!」
永倉は衝撃的そうな顔をして、声を上げた。
結構響いたから、しっと指を立てると、永倉はバツが悪そうに肩をすぼめた。
「〝金属ばっと〟ってのは……」
「あ、分かんないですよね。金属バットってのは、金属で出来た棒みたいなやつです」
「そんなもんで…………殴られたのか?」
眉間に寄ったシワが、みるみる深くなっていく。
うーん、土方に勝るとも劣らないくらいだ。

