「宮本?」
後ろから呼ばれ、ハッとして振り返る。
勘定の終わっていた斎藤が、怪訝な顔であたしを見ていた。
「あ、すいません。勘定、ありがとうございます」
「構わん。頼まれたからな」
斎藤は素っ気なく言うと、あたしに短めの刀を差し出した。
「脇差だ。その刀とともに、腰に差せ」
こんな風に、と斎藤が自分の腰を見せたので、同じように差して見る。
思ったよりしっかりささっていて、走っても落ちそうにない。
それより、刀の重さに驚いた。
少し重心が傾き、よろめく。
「大丈夫か」
「ビックリした……。刀って重いんだ」
「そうだろう。人を斬る重さだ」
「……ふぅん」
何だかよく分からず、生返事になる。
そんなあたしに斎藤はなにか言いたげに口を開いたが、結局何も言わず口を閉じた。

