【土方】 月が雲に隠れる。 障子の隙間から差していた光が消える。 「嫌な天気だな…………」 永倉が胃の痛い思いをしていたその頃、土方は自室で月を見ていた。 今夜の空は嫌な空だ。ザワザワと揺れる木々も何だか気味が悪い。 「何が嫌なんですか?」 廊下から声がかかる。 壁に持たれて隙間から月を見ていた土方は、 その声に背中を起こすと、障子を開けて外に出た。 「総司」 「今日は風がうるさいですねぇ。まるで責められている気分です」 ふっと笑いながら、肩をすくめて廊下に手をつく。