「逃げようとか考えているんだろう。
この状況で簡単に逃げられると思うなよ」

「……………」


あたしは挑発するように笑って見せる。


(………別に思ってないし)

“名剣士” と名高いあの “沖田総司" と渡り合おうなんて思わないし。

この男にしたって、立ち振る舞いに隙が無い。

並大抵の腕では無いはずだ。
そんな奴らマジ勘弁。


「バケモノじみたあなた方に逆らおうなんて思いませんよ」

「…………そうか」


山崎は表情ひとつ変えないであたしから目を逸らすと、
「歩け」とあたしの背中を押しながら歩き出した。