あたしは地面に転がり咳き込みながら武田を睨み上げる。

「クッ。……いい目だ」

武田は鞘から静かに刀を抜くと、口許を歪めた。

不気味に笑う顔に、背筋に冷や汗が流れる。


───この上なく、ヤバイ予感がする。


「残念だな。逃げたりしなけりゃ、俺の用心棒にでもしたんだが」

「ふん、何を。用心棒に用心棒なんか必要ないでしょ」

「クッ。用心棒だから用心棒が必要なんじゃ」

刀の先で、斬れないように顎を上げられた。


「馬鹿じゃない?あんた用心棒だからって主人の為に命懸けるほど利口じゃないでしょう」


「………フッ。……本当にいい女だ。俺の女にしたいぐらい」

「あら。バレてた?」

「見たら分かるわ。俺の阿呆な主人は気付かないだろうが」


顎から刀を離し、正眼に構えた。

「ま、無理もねぇ。お前は女のくせして背丈がデカイからな」

「余計な………お世話だっつぅの」

武田は笑いながら刀を振り上げた。


「あばよアバズレ。悪いな、あんなんでもまだ俺の主人なんじゃ」

「…………」