『浪士組に女なんかいらねぇんだよ』

唐突に、そう言い捨てた土方の、冷ややかな目を思い出した。


『副長は優しい方だ。そのうち分かる』


………もしかしてあの言葉は、斎藤くんの言うアイツなりの “優しさ” なんだろうか。

皮肉ではあるが、分かっている。
分からないほど鈍くないし、お節介そうな奴らの機微なんて考えないでも分かる。


でも、気にくわない。

言うなら言うで直接言えばいいじゃん。
何で遠回しに実行しようとするかな。

肝心なことは何一つ言わない。これだからあの類いの男は嫌いなんだ。


(……お互い様だけどね)

素直じゃないのはあたしだって同じだ。

だからこそいけすかない、と思う。


(何か疲れた)


悩むのも、考えるのも性に合わない。

今度こそ頭を動かすのを完全に
シャットアウトして、天井に浮かんだ、不気味なシミを眺めながら、静かに目を閉じた。