部屋にて。

あたしは部屋にある竹刀を取りに戻った。


愛用の品。勝負するならこれがいい。

眼帯は直前までつけたまま。面を被る前に取るようにしている。

両頬を叩き、気合いを入れてから部屋を出た。


(あたしを馬鹿にした奴らに、目にもの見せてくれるわ)

内心 女らしくない下品な笑いを漏らしながら、無表情でいると。


「おい」


いきなり声がかかる。

視線をずらすと、障子の隣の壁に腕を組んで佇む人。


「あ、斎藤くん」

「馴れ馴れしいな」

斎藤は横目にあたしを一瞥し、そう言った。


「斎藤さんの方がいいですか?それとも下の名前?」

「俺の名前を知っているのか」

「知らないです」

「一(ハジメ)だ。斎藤一」

「一くん?カッコいい名前ですね」

「………そうか」


何だ今の間は。

まさか照れてる?