「寝ぼけたこと言わないでくれる。あたし、 飼い犬になった記憶なんかないんだけど」 「……きっ、さま……」 グラリと傾き地面に倒れこむ男。 あたしはそいつを冷たく見下ろした。 サァァ、と弱い風が吹く。 月明かりが色付く、あたしの髪を撫でながら、通り過ぎていく。 「教えてあげよっか」 「━━━━…あたし、犬は犬でも野良犬なの」