だんだん数がまばらになってきたような。

あちらもこちらも人数は結構いたから。使えるか使えないかはともかく。


ビシッ!

バシン! ドッ!


「さすがに手ぇ痺れてきたんですけどー」

休戦、とか言ったらキレるだろうな。なんて思いながら額の汗を拭う。


「ぬおぉぉぉぉぉ!」

「おっと!」

間一髪刀を避ける。髪の毛が二、三本斬られた。

さすがに冷や汗が出る。

(今更ながら、ホントにタイムスリップしちゃったんだな)

今まで実態のないふわふわしたような意識で、漠然と理解していたが、

今の瞬間、一気にこれが現実なんだと実感した。


「この……幕府の犬めがぁ!」


幕末。

世の中が、変わろうと躍起になっていた時代。

命を懸けて、必死に生きた人々。


あたしとは━━━違いすぎる。


この状況に、一抹の不安を覚えると共に、
あたしはどうしようもなくこの状況が馬鹿馬鹿しくなった。



ゴッ!

「………っぅ、ぐっ」

棒切れでちょんまげの手を刀ごと押さえると、
ちょんまげの力が緩んだ一瞬の隙をついて、鳩尾に蹴りを入れた。

「幕府の犬?」

目を剥きあたしを震えながら見るちょんまげを、薄ら笑いを浮かべながら見つめた。