「………どうかしたか? 悩みがあるなら、私が聞こう」



だれでも安心するような笑みを向けられ、ようやっと口を開いたかと思えば。



「わす、れた……」

「?」


「僕……さっき、まで、なに、してたっけ……な」



思い出せない。

虚ろな目をしてマスターを見つめる4番目。その様子を黙って見ていたマスターはそっと語りかける。



「思い出せないのなら、無理に思い出さなくてもいい。嫌な思い出なのなら、もし思い出したとき私がそれを『否定』しよう」



そう言うなり4番目の前にカップをおくマスター。

ふんわりと甘い匂いの広がるこの飲み物は、気持ちを落ち着けてくれるオレンジティーだった。