洸さんとあたしのシェアハウスは相変わらず静まり返っていた。

ひとりきりの食卓。
さっさと食事を済ませると、お風呂に入ることにした。

もうすぐテストだし、そろそろ勉強しなきゃな……。
ホットココアでも作ってのんびりやろう。


「ふぅ」


そんなことを考えながら湯ぶねに肩までつかる。

お風呂はスキ。
パパと暮らしてた頃は好きな漫画とか小説とかを持ち込んで半身浴とかもしてたっけ。
それでよく、「遅い」って怒られたりして。

ふふ。

そうだ。　
お風呂と言えば、小さい頃はよく近くの銭湯にも行ったなぁ。

本当は本物の温泉に行ってみたかったけど、あの頃のあたしはそれを言い出せずに、スーパー銭湯で我慢してたっけ。

あ、でもお風呂出てからのコーヒー牛乳大好きだったっけ。
パパはフルーツ牛乳で、ふたりで一気飲みしたりして。

思い出して、少しだけ可笑しくなる。



チャプン


口元まで湯船にはいって、そっと目を閉じる。

ゴロゴロ……と、遠くの方から雷の音が聞こえてきた。
すると、すぐに雨も降りだしてきて、あっという間にどしゃ降りになった。


「雨だ……。洸さん、傘持ってるのかな」


バスタオルで体を拭いていると、玄関のドアが開く気配がした。


お、帰ってきた。
じゃあ、あんまり濡れずにすんだかな。

そうだ、美術室でなにしてるか聞いて…………、


――ガラ！




「……」

「……」




！！！！？？？？

勢いよく開いた浴室のドア。
そこには、予想に反してずぶ濡れになった洸さんがいて。



こ、こ……こ、洸さ……