……ミーンミンミンミーーン


開け放った窓から、少し元気のない蝉の声が聞こえる。


ベッドに転がったまま、しばらくそれを聞いていたあたしは、意を決して勢いよく飛び起きた。



クローゼットからクリーニング済の制服を取り出して、頭からかぶった。

姿見の前に立つと、真っ赤なリボンを結んだ。


中学の頃はブレザーとかにも憧れたけど、今となってはどうでもよかった。

と言うか、このセーラー服がしっくりくる。
チェックのスカートも可愛いし、お気に入りだ。


長い髪をくしでサッとといて、よしと顔を上げた。



さっきから、キッチンの方でいい香りが漂っていた。


これはコーヒーの匂い。
懐かしい香りだ。


パパもコーヒー中毒者で、いつもコーヒーばかりを飲んでいた。

甘党で、角砂糖とクリープは欠かせなかったみたいだけど。


あたしはその反動なのか、ブラックが大好きだった。



そのコーヒーの香りに誘われるように、部屋のドアを開けて、そっと様子をうかがった。



……あ。