「よし!行こう!」

長い髪を三つ編みにして度の入っていない黒縁眼鏡を掛けて寮の部屋を出る。
この学園は全寮制なので楽といえば楽。
だが、寮を出てみて分かった事が一つ。

男女共々美形ぞろい。

…私を苛める気満々か!
私の身近にもいますよ。父さん・母さん・兄さん・姉さんという美形が。
家族で街に出かけると、宛さながら芸能人が来たみたいに写真を撮られまくる。
それが嫌でこの学園に入ったんだけど。
地味な女の子演じるのは気が引けるが人生の永遠の友といえるギャンブルの為に!
高らかに宣言できるね。


「桜並木…入学式…株の取引うまくいってるかな…」


携帯を制服のポケットから取り出して株式市場を確認。
上がり下がりを繰り返す株式にため息しか出ない。


「暇だなぁ…」


寮から校舎まで長すぎる。
携帯ゲームもやり尽くしたし…


「さっさとギャンブルやりたい…」



申し遅れました。
ギャンブル好きの毛利的です。
ポーカー大得意です。
因みにイケメンな幼馴染みがいます。
3人程。
でも1人は海外に行っていて音信不通ですが、彼奴なら大丈夫だと熱い信頼を寄せているので、心配はしていません。
何だっけ?
自分探しの旅だっけ?
お前は居るだろって言って殴りたくなったのは、私だけじゃないはず。
イラっときたもん。
独り言でごめんなさい。

いやさ、まだ初日だしぼっちだし。



ピロピロピロピロピピピピピーロ


「あ。薙ちゃんからメールとか久しぶりじゃん」


メールを開いて確認してみると彼の性格を表すような味気のない内容だった。
調味料あげようか?


「クラス表に名前の載ってない奴は今直ぐ銅像前に来いだって?なんのこっちゃ」


我が幼馴染みは味気がなく、意味不明なメールを送り付けてきた。
引きこもりニートが。
少しくらい味のあるメールを送ってはくれないのかな?
薙ちゃんの片割れとは全くといってもいいほど違うよね!
まず片割れは文の最後に可愛い顔文字付けてくるのに。
女子力が女の私よりも高いだなんて…誰か平等権を発動してくれ。

「とにかく、クラス表を見れば意味不明なメールの意味も理解できるでしょ」


所変わって、クラス表前



「こんなに新入生がいるとは…絶対に「「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」遅かったか…」


急に背中に何かが乗る。重い。引っペがしたい。


「煩い…やっほー的」
「うん。3日ぶりだね」
「眠い…」
「言葉のキャッチボール出来てないよ」
「的のくせに…」


私のくせにって何様だあんたは。
気怠げに言うな!根暗!


「薙ちゃん、私目立ちたくないから背中から抱きついてくるのは止めてよ…」
「嫌だ」


こんにゃろ…!私が目立ちたくないことを知っててやってるな引き籠もり!


「離れなきゃパソコンにウイルス入れるよ」
「いいよ。コピー幾らでもあるし。」
「じゃあ、パソコン壊す。」
「……」


どうだ!これなら何も言えないでしょ!
勝ち誇った顔で横を向くと、眼鏡の奥にある綺麗な瞳が妖しく光っている。


「……フッ」


あれ?おかしいぞ?笑ってる?


「的が払ってくれるならパソコンなんて安いよ。」
「一様聞いておく。どういう風に払えばいいの?」
「勿論的のから「言わせねえよ!」えぇ~」


ダメだこいつ…!イケメンのくせに変態属性が見え隠れしている…!


「さあ離れてもらおうか。クラス表見れないでしょ?」
「的の名前無いよ。それと周りの女煩い。寝させろ」
「ここで寝たら救急車呼ぶよ。薙ちゃん」


常に眠そうなイケメンは私の幼馴染み、斑鳩薙
いかるがなぎ

平日でも出来るだけ引き籠りたいと常々言うが、顔は特上の一品。
熱視線は何処へ行っても変わらない。
正しく現代の光源氏。
私どんな文学少女なんだ…
名前しか知らないのに…
もう周りの女子の視線がビームだったら確実に私死ぬ。

というか、一つ疑問がある。


「どうして私の名前がないってわかったの?これだけのひとがいるのに」
「全部見た。3分で」
「天才か!」
「よく言われる」
「あはは、爆ばくれ。あれ?こんな会話しなかった?」
「さぁ?一々会話は覚えてないよ。脳の細胞を会話何かで使いたくないし。面倒だし。」


最後の言葉は絶対に本音だよね。
顔が横にあるから片耳がくすぐったい。

取り合えず、引っぺがして薙ちゃんが銅像前に行けと言うので案内役を任せて薙ちゃんについて行く。


「ここ…」
「意外と人いるんだね」


ザッと見て50人。
怠そうな薙ちゃん。
これからやる事が分からない私は取り合えず前に進む。

制服姿の男女と様々な服装の大人達。
何方も同じぐらいの人数だった。

その中で白衣を着た男の人が近づいてきた。


「いやぁ、遅かったね!来ないかと思って心配したんだよ~?」


ほんわかした雰囲気に飲み込まれそうになって、はっとする。


「初めまして~、養護教諭兼数学担当の根岸です~」


リアル天然っぽいね。優しいお兄ちゃん系だと思います。


「早速だけど、皆もう始めてるから始めちゃおっか!」
「えっ?えっ?」
「あれ?彼から聞いてないの?」


根岸先生は薙ちゃんを指差した。


「やべ、忘れてた。てへぺろー」
「薙ちゃんんんん!!!!」


無表情にてへぺろやっても可愛くないよ!
てへぺろは可愛い子がやってこそのなんぼで、とにかく無表情でやるものじゃないの!
私が一番理想とするてへぺろは弟系の可愛い男の子がヘマしちゃっててへぺろするのが一番の理想なんだよぉぉぉおお!!!!
わかるか!?
この気持ち!?