存在すらも抹消され、この世にないものして扱われた彼女が、死んだ筈の彼女が今此処に、俺の目の前に立っている。
何故…?
どうして…?
何が起きている…?
何がどうなっているんだ…?
現状が理解できなくて…
目の前の彼女が信じられなくて…
コウガはその手に剣を握り、震える切っ先を彼女へと 向ける…
「…仕方なかったの。あぁするしか術はなかった。自由になる為には、此処から脱け出す為には、死んだ事にしなければならなかったの」
死んだ事にしなければならなかった…?
と言う事は、彼女は生きていると…?
目の前の彼女は本物だと…?
あの死は偽装だったと、そう言うのか…?
「自由な身になる為、私は彼の力を借りた。だから私は彼に力を貸す。この世界を変えると言う彼に」
彼女が差す彼とはライアの事を示すのだろう。
ライアによって殺されたと思っていた彼女。
しかし事実は異なった。
実際彼女は死んではおらず、彼女はライアの仲間であったのだ。
「ねぇコウガ、私と一緒に来て。共にこの世界を変えよう。私には、貴方が必要なの」
動揺する彼に手を差し伸べる彼女。
久々目にした彼女の優しい微笑みに、何もかも忘れてしまった彼は剣を下ろし彼女に手を伸ばす。

