頭の中が混乱する。

何が正しく何が間違っているのか分からない。




 「…誰…貴女は誰……?私は……私は……」


頭を抱えたティムリィは机の上に置かれた物を腕で払うと立ち上がる。


ティーポットが割れ零れた紅茶はシミを作り、転がる菓子は踏まれて跡形もなく粉砕した。




精神の崩壊した彼女は、何時の日か知らぬ内に自分とは異なるもう一つの別人格を創りだしていた。


それは自分を護ってくれる強い姉という存在であり、全ての苦痛を代替わりしてくれる存在。



両親から暴力や暴言を受ける際、もう一つの人格と入れ替わりその人格が苦痛を全て引き受ける。



自分自身を護る為に創りだした人格を、彼女は姉だと思い込み、そう思う事で苦痛な日々から耐えてきた。




暴力を受ける他人を何処か遠くから見ているような感覚が、更にその思想を後押ししたのだろう。





と言う事は、ヴィネッド家を襲った犯人はティムリィ・ヴィネッド彼女自身。



信じたくは無いが、それは変えようもない事実となる。