町の隅に佇む何ら変わりない小さな一軒家。


その家の中からバイオリンの音色が微かに漏れる。


とても上手な演奏なのに、その音色はどこか悲しくて、痛々しいく棘を持つ。




 「ん……」


その音色を耳にしたシェイラは失っていた意識を取り戻し、自分の置かれている現状を把握する。


椅子に腰掛ける自分は先程まで居た場所とは異なる場所に居る事は判断できた。


しかし、何故気を失い、何故此処に居るのかは理解できない。




 「お目覚めになられましたか?」


バイオリンの音が鳴り止み、変わりに聞こえてきたのは聞き覚えのある女性の声。


顔を上げれば、机を隔てた向こう側に1人の女性が立っていた。




柔らかくウェーブのかかった金髪にミニハットを飾り、オレンジの瞳で見つめてくる彼女は知り合ったばかりの女性である。



互いに話が合い、気を失う直前まで語り合っていた彼女が今、何か不振な笑顔を向けてこちらを見つめる。




 「っ……」


 「あまり動かない方が身のためですよ?」


頭痛のする頭に手を伸ばすが、彼女は何故かそれを制した。