声に出すと、胸が苦しくて……泣きたくなってくる。


「そういう意味じゃない。巻いたまま運ぶより、伸ばして運んだ方が、ひとりにかかる重量は軽くなる。『赤い人』や健司に見つかる可能性は高くなるけど、その方がいいだろ、今の状況だとさ」


翔太はそう言うと、高広の肩に担がれている綱に手をかけた。


翔太が綱の先端を持ち、それを高広に手渡す。


作戦としては、高広が先端を持ち、階段を下りて、二階の図書室前の廊下を走る。


そのまま西棟の三階まで駆け上がり、北側の階段まで移動して、そこから屋上に上がるというものだ。


この間、気をつける事としては、放送室から見られないように窓より身を低くして移動しなければならないという事。


そして、西棟の二階の廊下。


ここで一度止まり、歌が聞こえないかを確認してから横切らなくてはならないのだ。


綱は、廊下にはわせておけば、暗闇の中では見えないという判断。


それに賭けるしかなかった。


綱の先頭を高広が持ち、真ん中を翔太が持つ。


その間に私が入り、翔太の後ろを理恵と留美子が持って、すでに移動を開始していた。


高広が西棟の廊下を横切って、次は私の番。