「今日は、やけに校内放送が流れるまでの間隔が長いよね。これじゃあ、動けないよ」


そう思っているのは私だけじゃないはず。


「赤い人」が突然現れるのは怖いけれど、どこにいるかわからない方がもっと怖い。


「んな事言ってても始まらねぇだろ。嫌でもやるしかねぇんだよ」


疲れているはずなのに、高広が再び綱を肩に担いで立ち上がった。


この重い綱を肩に担いで、引きずるように運ぼうとする高広に、誰も文句なんて言えなかった。


その変わり、誰も手を貸そうともしない。


一度、「行けるかもしれない」と思ってここまで来たのに、また移動しなければならないのだ。


心が折れてしまったのかもしれない。


「高広、私も手伝うよ」


この場所を調べようと高広は言ったのに、私が違う所を調べようと言った。


その結果がこれなら、責任は私にある。


「ちょっと待て、本当にそのまま行くつもりか?」


ゆっくりと立ち上がりながら、翔太が呟いた。


高広は止めても行くだろうし、ひとりだけで運ばせるわけにはいかない。


「だって、行かなきゃダメなら行くしかないよ……私がしっかり調べてたら、最初から西棟の屋上に行ってたのに……」