「健司! 行くぞコラァ!!」


そう叫び、健司に向かって走り出す高広。


私も続いてそれに続いて……カラダを抱えたまま、高広を信じて、健司の横をすり抜けようと走った。


私に手を伸ばそうとする健司。


しかしその手は、高広の飛び蹴りで、私の髪をかすめて後方に弾かれたのだ。


「高広、ごめん!」


ギュッと遥の左胸を抱き締めて、産業棟に入り、西棟に向かう渡り廊下へと走っていた時だった。


背後で……グチャッという、何かが潰されたような音と、短い悲鳴が聞こえた。


今の、何かが潰れた音は何?


それに、かすかに聞こえた悲鳴は、高広?


渡り廊下の真ん中で、後ろが気になり、チラリと振り返った私が見たものは……。







「ま、待てぇぇぇ!に、に、逃げ、逃げるなぁぁぁっ!!」







笑みを浮かべて私を追いかけて来る、右手が真っ赤に染まった健司だったのだ。


嘘でしょ!? 高広は……もしかして殺されちゃったの!?


「昨日」気づいたら殺されていたって、高広は言っていた。


そんなに簡単に殺されるなら、私なんかじゃ絶対に一秒も持たない。


西棟に入り、階段へと走る。


私と健司との距離はもう5メートルもない。