「俺は理恵がいてくれたら……それでいいんだ……他は何もいらない……」


昔から健司は、考え込むタイプだった。


「カラダ探し」なんかさせられて、ひとりになって……。


「昨日」の夜には、理恵を襲おうとして、そして「赤い人」に殺された。


学校を休んで、ひとりで考え込んで……精神状態が悪化したのだろう。


そう考えると、私の目から涙があふれた。


健司の身体が、私の身体に触れ、その手に握られた包丁が、私の腹部に侵入する。


お腹の中の、冷たい異物を感じながら、身体から力が抜けて行く感覚に震える……。


私の腹部に刺された包丁が、スルリと抜けて……私は床に倒れた。


「かはっ……理恵……逃げ……」


腹部を押さえながら、理恵の方を向いて私は呟いた。


痛いのに……意識はしっかりしていて苦しい。


留美子もこの苦しみを感じているのかな……。


さっきまで唸っていたけど……その声も聞こえなくなった。


包丁が内臓を避けたのか……痛みだけが身体中を駆け巡っているみたいで。


手で押さえている腹部から出る、ぬるい液体が止まらない。


「理恵……これで誰も邪魔しないよ……俺、ずっと理恵の事が……」