「ねえマスター。さっき言ってた27歳で死んじゃった人たち、ほんとにみんな27歳で死んじゃったの?」
ハサンが帰っていったあとの夜8時過ぎ。あと片付けもあらかた終わり、マスターはカウンターに座って、いつもどおりビールを飲んでいる。
「ああ。みんな判で押したみたいに27歳で死んだ」
「どうして死んじゃったんだろう?」
「たぶん自分の表現しているものが、自分の思っている以上に多くの人を救ってしまったんだ。でもきっと彼らにはそんなにたくさんの人生を背負えなかった。もともときっとそんなつもりじゃなかったんだよ。ただその自分の中のなにかをなんらかの形で外に出してしまわなくちゃ生きていられなかっただけなんだ。別に誰のことも救うつもりはなかったんだ。そしてそこには多くの賞賛と身におぼえのない失望があり、欲望や狡さにも出会うことになった。そういう人生をきっと彼らは望んでいなかったんだと思う」
「そっか。そういう人生も大変そうだね」
「きっと楽じゃない」
「ねえマスター。その27歳の音楽、ひとつだけ聴かせてよ」
「もう遅いから明日かけてやるよ。8時だ。今日は帰れ」
「ううん。今聴きたいの。1曲聴いたら帰るから、お願い」
