一時間半ほど東へ走ったところでナビの画面に目的地が表示された。 

「よし、もうすぐだ」

 着いたら何をお願いするのか、家を出た時からずっと考えてきた。  
 ともかく、この不満だらけの生活を変えたい。その為には、それに見合った相手が必要だ。私の中での結論は、こう決まっていたのだ。 

 ナビの「目的地に到着しました」の声に、私は緊張してきた。土の地面のままの小さな駐車場の一番奥に車を停める。 

「客は私一人なのかな・・・」

 辺りを見回しながらそう思った。しかし、それなら逆に好都合だ。余り他人に聞かれたくは無いお願いをするのだから。 

 玄関を開けると湿っぽい空気を感じた。二度目の「ごめんください」の途中で廊下の軋み音が聞こえた。 現れた女性はここの神主なのだろうか。老婆にはまだ少しばかり早い背の低い女性に導かれると、縁側のある和室に通された。そして一度部屋を出た老婆には少し早い女性は、その後私の目前にお茶を出してきた。 
 私の喉はさっきから渇ききっていた。少し温めのお茶は心地好い温度で体内を潤した。 

「で、ご用とは?」

 私は、結婚当初から今に至るまでの経緯を事細かに説明し、最後に浮気相手が欲しいと切々に願った。
 その間、老婆にはまだ少しばかり早い女性は、無言でじっと聞いていた。 
 私は、話終えるとまた喉が渇いた。湯飲みに残った半分ばかりのお茶は既に冷めていた。 

「残念だが・・・・」

「はっ?」

 その残念の意味が分からず私は聞き返した。 

「実は・・・・」

「えっ?」

 私は再度聞き返した。