住所も無く、書いてあるのは電話番号だけだ。それ以外は、PRとして「ここを訪れた信者には必ずや御利益がある」と記されている。 
 私は、一行だけのこの短い文章に何かを惹かれた。
 翌朝、義也が出勤した後に電話を掛けてみた。出来れば、住所を聞きたい。そんな理由からだった。しかし、呼び出しはするがなかなか受話器が上がらない。既に呼び出し音は二十回を越えているだろう。私は、それから後十回程鳴らしたが、その辺りで根負けした。 

「こんな朝っぱらから出掛けたのだろうか」

 それから二時間後、やっぱり受話器が上がることは一度たりとも無かった。


 久美子は電話を諦め、カ―ナビに電話番号を入力した。