家の中も庭同然にゴミだらけだと思っていた。それが、こんなに綺麗に片付けられているなんて、こんな落差を目撃したら誰だって間抜けな声を出してしまうに違いない。 

「驚きましたか?」

「ええ、予想外なことでビックリしてしまいました」 
「予想外ですか?まあ、確かにそうなんでしょうね」
 綺麗な女性は、今度は少しだけ声を出し、ウフフと笑った。 

 義也は真っ白なリビングに通されたが、照明を点けられた部屋は夜のような雰囲気であった。窓からの景色と言えば、やはりゴミの山だ。それさえ見なければ、こんなに片付けられた室内は珍しい。綺麗な女性は、成瀬真奈美と名乗り、義也に白いソファーに座ることを勧めた。

「それにしても、中はこんなに綺麗なのに外はゴミだらけなんですね」

 義也は最初に感じた疑問を投げ掛けてみた。 

「ですから、困っていると申したでしょ?」

 真奈美は、義也の目を真っすぐに見つめた。 

「実は、このゴミは私の家のものでは無くて、勝手に外から投げ入れられたものなの。何度片付けてもすぐに次のゴミを捨てられてしまって。そしたら、いきなり父が倒れて入院。病院で付きっきりで看病している間にこんなゴミ山になってしまって」

 義也は、そんな事があるもんかと思ったが、口には出さなかった。

「警察には?」

「勿論、相談させて頂きましたわ。だけど、警察の方は私の話を信じなかった。それどころか、周辺の方々の意見を尊重し、すぐに撤去するように言ってきたの。それで私もカチンときましてね。以前、テレビで見た時の事を思い出して、これは私の資産ですって宣言しちゃった」 

 真奈美はペロッと舌を出した。 

 義也は、その愛くるしい仕草に胸をわし掴みにされた。こんな想い、生まれて初めてのことで、このまま真奈美と一緒に居られたらどんなに幸せか。心の底からそう思った。 

 その夜、義也は自宅へは戻らなかった。