義也は、車が見えなくなると塀の入り口から中を覗いて見た。 

「うわっ、凄いゴミ。テレビで見たのと同じだ」

 義也は、マスコミにでもなったかのような気分で庭を見渡した。 

「また来たのか?もう来るなと言っただろう」

 また怒鳴り声が飛んできた。 

「いや、僕は違います」

 気が動転したのか、変な返事をしたことに顔がゆでダコのように火照った。 
「あら、違うの?」

 玄関らしきところから人影が現れた。 

「で、どちら様?」

 さっきの怒鳴り声とはまるで別人のような軟らかな声の女性だった。歳の頃は四十くらいか。白いブラウスと淡いピンクのロングスカートが似合う綺麗な顔立ちをしている。 
 
 隣人なのか?義也はそう思った。

「あのう、こちらの方は?」

「えっ、私ですけど」

 綺麗な女性は不思議そうに答えた。 

「あ、そうなんですか。余りにもお綺麗なので、隣の方かと思いました」

 女性は笑みを浮かべたが、声を出して笑うことはしなかった。 


「それにしても・・・・」
 義也は庭の中を見渡す振りをした。 

「あ―、これでしょ?私も困っているんですよね」

「困ってるって?」

 義也は意味が分からなかった。 

「時間がおありなら中へどうぞ。ここでは何かと目立ちますので」

 義也は綺麗な女性の後に続いて家の中に入った。 
「えっ?」

 中に入るやいなや、義也は間の抜けた声を上げた。