「えっ?あっ、大丈夫ですか?」

 義也は派手に転んだあと大の字になった男の腕を掴み引き上げた。男は、「どうもスミマセン」と言って素直に立ち上がった。 

「いったいどうしたんですか?」

 男は悔しそうな、それでいて恥ずかしそうな何とも言えない顔で答えた。 

「ここ、ゴミ屋敷なんですよね・・・」

「ゴミ屋敷?」

 ゴミ屋敷なんてテレビでは見た事があるが、実際にあるなんて思ってもいなかった。 

「ええ、そう。ゴミ屋敷なんですよ。それで、道路にまでゴミを積み上げていると苦情が入って仕方がないので、こうやって撤去のお願いに来たのですが、後はご覧の通りで・・・・」

 男は恨めしそうな表情で塀の入り口を睨み付けた。 
「それは大変でしたね。でも、こんな朝早くからどうしてまた?それに今日は土曜日ですけど、そちらは市役所の方なんでしょ?」

「はい、市役所の係の者ですけど、ここの人って平日は昼も夜もいつも留守なんですよね。だから、土曜日の朝なら居ると思ったんですが、まさかこんなにキレられるとは・・・・」

 男はそう言い残すと、道路脇に停めていた車に乗り込み去って行った。