この長い梅雨が明けたら二十代最後の年となる。 
 青峰麗子は友人の披露宴の席で一人ぼっちとなった自分の身を案じながらグラスを傾けた。 

 亜希美はいつにも増して華やかだった。それでいて謙虚な一面を持つ女性だ。私と比べたらなんて、そんなおこがましいことが言える程のライバル心さえ起こらない。 
 亜希美は、私の居場所を確認すると、薄い笑みと一緒に白いブーケを投げた。私は、恥じらいながらも舞い落ちる亜希美の気持ちに手を伸ばしたが、それは私の手の平をスルリと抜けると見知らぬ若い女性の手に容易に拾われた。そんな私の様子に、亜希美は哀れみの失笑を浮かべた。 

 その夜、一部屋だけのアパートでレトルトの食事を済ませると、亜希美の失笑がフラッシュバックして私を切なくさせた。今夜は長い夜になりそうだ。私は、嫉妬と落胆と自己嫌悪の中、現実から逃げ出そうとパソコンを立ち上げてみたりなどした。

 古いソフトは気が遠くなるほどの時間を掛けて私を嘲笑う。