『なんだ……。大輔君が加奈子からもらうモノって、要するに時間だった訳ね? 私はてっきり……』

「な、何?」

『ううん、何でもない』


志穂ははっきりとは言わなかったが、きっと自分と同じ想像をしてたんだろうな、と加奈子は思った。


『としてもさ、やっぱりって感じだわね……』

「何が?」

『大輔君、加奈子に気があると思うのよね』

「そ、そんな事……」

『ううん、間違いないわ。加奈子に言った事ないけど、実は前から大輔君は加奈子に興味を持ってたのよ?』

「私に?」

『うん。家に来ると、ちょくちょく加奈子の事を私に聞いて来るの。あ、変な事は言ってないから心配しないで?』

「うん、それはまあ……」


加奈子は、大輔から“隠れファン”と言われた昨日の事を思い出した。加奈子の誕生日を知っていたのも、志穂から聞き出したんだな、と。


『もしかして……と思ってたけど、やっぱりそうだったんだわ。ねえ、“好き”とか“付き合おう”とか言われなかったの?』

「ま、まさか……!」

『そう? でも、いずれそうなると思うよ。加奈子の気持ちはどうなの?』

「わ、私は……」


突然聞かれても、何て答えていいのか加奈子には分からなかった。今日、加奈子は確かに自分の気持ちに気付いたと思う。しかしそれをすぐに志穂に打ち明けていいものかどうか……

学生の頃なら、深く考えもせず素直に打ち明けたかもしれないが、大人の今は、軽々しく口にすべきではないように加奈子は思った。