「主任……?」


加奈子の剣幕に大輔は驚き、そして失望を覚えた。

なぜなら、大輔は今日の事を含め、加奈子との事は誰に対してもオープンでいたいと思っていたからだ。加奈子の真意は分からないが、少なくても自分と同じ考えでない事は明らかで、その事に大輔はがっかりしたのだった。


「わかりました。写メはもちろん、今日の事は誰にも言わない事にします」


大輔は、彼にしては低い声でそう言うと、加奈子の肩から手を離し、車に向かって歩き始めてしまった。

加奈子は、肩と体全体が感じていた大輔の温もりを急に失い、逆に急激な寒さを覚えた。体だけでなく、心までも……


「嶋田君、怒ったの?」


加奈子はすぐに大輔の横に並び、彼の顔を下から覗くようにしてそう言った。


「別に、怒ってなんかいません」


と大輔は言ったが、その声と表情で、やはり大輔は怒っていると加奈子は思った。そして、なぜかは自分でも分からないのだが、大輔には怒ってほしくないと加奈子は思った。彼の機嫌が直るなら、何でもしたいと……


「うそ、怒ってる。怒らないで?」


加奈子は、自分でも驚くような甘えた声を出すと、大輔の腕に自分の腕を絡めていった。