「いい人いないかしらね……」
不意に志穂が呟き、加奈子は「何のこと?」と聞き返した。
「加奈子の彼氏よ……」
「わ、私の? どうしたのよ、急に……」
「加奈子にも素敵な彼氏が出来ればいいのにな、と思ってさ。ねえ、好きな人はいないの?」
「え? ん……いないわね」
加奈子は少し考えてからそう答えた。社内で、ちょっといいかなと思う男性は時々いるように思う。でも、はっきりと“好き”と言えるような男性はと言うと……一人もいなかった。
「そうなんだ……。ん……あ、香川さんなんて、どう?」
「ちょ、志穂ったら、何を言ってるのよ……」
「あの人、確かまだ独身よね? 歳もたしか40そこそこだと思うし、十分加奈子の射程圏内じゃない?」
「とんでもない。それを言うなら“射程圏外”よ」
「どうして?」
「どうしてって、香川さんはバリバリのエリートなのよ? しかもあのルックスだもの、恋人の一人や二人いるに決まってるわ。そうじゃないとしても、私なんかが釣り合うわけないじゃない……」
「そうかなあ。そんな事ないと思うけどな、私は……」
「無理無理……」
先日、その香川から熱い視線を受けた事を加奈子は言わなかった。あれは自分の勝手な思い込み、と思っていたから。
不意に志穂が呟き、加奈子は「何のこと?」と聞き返した。
「加奈子の彼氏よ……」
「わ、私の? どうしたのよ、急に……」
「加奈子にも素敵な彼氏が出来ればいいのにな、と思ってさ。ねえ、好きな人はいないの?」
「え? ん……いないわね」
加奈子は少し考えてからそう答えた。社内で、ちょっといいかなと思う男性は時々いるように思う。でも、はっきりと“好き”と言えるような男性はと言うと……一人もいなかった。
「そうなんだ……。ん……あ、香川さんなんて、どう?」
「ちょ、志穂ったら、何を言ってるのよ……」
「あの人、確かまだ独身よね? 歳もたしか40そこそこだと思うし、十分加奈子の射程圏内じゃない?」
「とんでもない。それを言うなら“射程圏外”よ」
「どうして?」
「どうしてって、香川さんはバリバリのエリートなのよ? しかもあのルックスだもの、恋人の一人や二人いるに決まってるわ。そうじゃないとしても、私なんかが釣り合うわけないじゃない……」
「そうかなあ。そんな事ないと思うけどな、私は……」
「無理無理……」
先日、その香川から熱い視線を受けた事を加奈子は言わなかった。あれは自分の勝手な思い込み、と思っていたから。



