素敵な上司とキュートな部下

「つまり部長になった香川さんは、自分の部により優秀なスタッフを揃えたいと考えて、流通で地道に頑張って来た加奈子に白羽の矢を立てたんじゃないかしら。

しかも、ただ加奈子を引っ張るんじゃなくて、主任というポストを用意したのは、香川さんがいかに加奈子に期待しているかの表れだと思うし、周囲に対するアピールでもあると思うのよね。

“岩崎加奈子は優秀なんだぞ”って。“俺は彼女に期待しているんだぞ”ってね」

「そんなに私のこと持ち上げないでよ……。緊張しちゃうじゃない……」

「あ、ごめん。でも、実際にそういう事だと思うわよ?」


実際のところ、香川からはこういう言われ方をした。


『うちの連中は流通を知らな過ぎる。そんなんじゃいい営業は出来ないんだ。君も知ってると思うけどね。

だから君に来てもらい、そのあたりで連中をビシッと鍛えてもらいたい。営業の方は心配しなくていいからね? 僕がじっくり教えてあげるから……』


さすがに2年前まで同じ会社に勤めていただけあり、志穂の見方は鋭かった。ただ、その事で加奈子が辛い思いをする事までは予想できなかった。当の加奈子自身も……