「主任?」

「はい?」

「あのカクテル飲んで、どうなんですか?」


香川達と別れ、駅に向かって歩き出すとすぐに、大輔がそんな事を加奈子に聞いてきた。

加奈子が飲んだカクテルとは、例の『セックス・オン・ザ・ビーチ』なのだが、それを飲んでどうか、と聞かれたわけで、それはつまり、そういう気分になったのか、という意味の質問だろう。

と加奈子は受け取った。何の疑いも無く。


(うわ。いきなりそういう事言うんだ、嶋田君って……。この子は草食系かなと思ったけど、そうでもないのね。ちょっと意外……)


「そうねえ……何とも思ってないけど、量が足りなかったのかも。あと一杯飲んでいたら、もしかしたらその気になっていたかもね?」


加奈子は、ユーモアのつもりでそう答えただけで、実際には、ジュースみたいなカクテルを何杯飲もうが、そんな気になるなんて全く考えていなかった。つまり、セックスしたくなる、なんて事は……