「異動と同時に主任に昇格だそうで、おめでとうございます」
志穂は、改まった様子で加奈子にお辞儀をした。
「やだあ、やめてよ……。異動はともかく、昇格の方は辞退したかったんだけど、香川さんが聞いてくれなくて……」
「香川さんって、営業部次長の香川さん?」
「そうだけど、今は部長さんに昇格してるの」
「ああ、そうだったわね。あの人は優秀だもんね……。その優秀な香川さんから加奈子は能力を認められたんだから、大したものだわ……」
「そんな……、認められただなんて……」
「あら、そういう事でしょ? でなきゃ、わざわざ自分の部署に加奈子を引っ張るわけないもの」
「そうかなあ……」
と言いながらも、加奈子は顔が熱くなるのを感じた。というのは、数日前に加奈子は香川に呼び出され、今回の異動の内示を受けたのだが、その時の香川の乞うような口調と、加奈子を見つめる熱っぽくて真剣な眼差しを思い出したのだ。
その時の加奈子は、まるで香川から求愛されているような気がして戸惑ったのだが、今でも思い出すと、微かな胸の高鳴りを覚えた。ただの錯覚に過ぎないと、わかってはいても……
志穂は、改まった様子で加奈子にお辞儀をした。
「やだあ、やめてよ……。異動はともかく、昇格の方は辞退したかったんだけど、香川さんが聞いてくれなくて……」
「香川さんって、営業部次長の香川さん?」
「そうだけど、今は部長さんに昇格してるの」
「ああ、そうだったわね。あの人は優秀だもんね……。その優秀な香川さんから加奈子は能力を認められたんだから、大したものだわ……」
「そんな……、認められただなんて……」
「あら、そういう事でしょ? でなきゃ、わざわざ自分の部署に加奈子を引っ張るわけないもの」
「そうかなあ……」
と言いながらも、加奈子は顔が熱くなるのを感じた。というのは、数日前に加奈子は香川に呼び出され、今回の異動の内示を受けたのだが、その時の香川の乞うような口調と、加奈子を見つめる熱っぽくて真剣な眼差しを思い出したのだ。
その時の加奈子は、まるで香川から求愛されているような気がして戸惑ったのだが、今でも思い出すと、微かな胸の高鳴りを覚えた。ただの錯覚に過ぎないと、わかってはいても……



