素敵な上司とキュートな部下

まだ決まっていないのは加奈子だけとなり、仕方なく、


「私はコレにしようっと」


と、あるカクテルの名前を指差した。


「え? どれですか?」

「コレよ?」

「えっと、せ……!? えーっ?」

「なんだ? どうした?」


大輔が驚いた声を出したため、他の2人も加奈子が指差したカクテルの名前に目を凝らした。そのカクテルの名前は……

『セックス・オン・ザ・ビーチ』

ウォッカベースのカクテルで、名前はどぎついものの、アルコール度数はそれほど高くはなく、甘さがあって女性でも飲みやすいカクテルだ。


「ダメかしら?」

「そ、そんな事はないよ。なあ?」

「そ、そうですね」


若い大輔と美由紀は顔を赤くしたが、実は香川の顔が一番赤かった事は、店内が薄暗いため誰も気付かなかった。

実は香川は、見かけに依らず恋愛経験があまりなく、純情なのだ。ウェイターにオーダーする時、加奈子のだけは名前を言えず、「コレ」と言ってメニューを指差していた。