素敵な上司とキュートな部下

「剛史、座って説明しなさい」

「ちぇ。仕方ねえなあ。俺もあんまり詳しくは知らないよ」


と言って剛史は、腹を擦って「腹減った……」とぼやきながらソファーに座り直した。


「大輔は昔から頭のいい奴でさ、親の病院を継ぐために大学は超難関の医学部に入ったんだと。ところおやじさんと喧嘩して4年で大学を辞めて姉貴の会社に就職しちまった。あ、医学部って所は最短でも6年いないと医者になれねえらしい。

ところがおやじさんの方から折れて、やっぱり医者になって病院を継ごうって事になって、その医学部に復学する事になったわけ。たしか来月からだったかな。

ってわけで、最短ならあと2年で奴は晴れて医者になるわけよ。以上!」


「あらま……。あの子達ったら、なぜそれを言わなかったのかしら」

「さあね。自慢したくなかったのかもな」

「あなた、でかしたわね? 加奈子は……」

「そ、そうだな」

「ちぇっ。二人とも現金なもんだな?」

「そう言うけど、お金って大切なのよ?」

「はいはい。じゃあ何か食べさせてくれる?」

「わかったわ。今作るから待ってて?」


急に表情が明るくなった母親は、動きも軽く腰を上げた。ところが……


「あ、そうだ。ちょっと待ってくれる?」


剛史は母親を呼び止めた。