素敵な上司とキュートな部下

剛史は惰眠から目を覚まし、欠伸をしながら一階へ降りたところ、リビングにいる両親の様子が変な事に気が付いた。


「どうしたの、二人とも? 空気が淀んでるけど」

「やっと起きたのね。座って話を聞いてよ。もう、びっくりなんだから……」

「何かあった?」


剛史はソファーに座ると長い脚を組み、興奮気味の母親の話を待った。


「さっきまでそこに加奈子と誰が座ってたと思う?」

「姉貴と? さあ……わかんねえ」

「嶋田君よ。あんたの後輩の。香川さんじゃなくてね」

「ふーん、大輔が来てたのかあ。起こしてくれればよかったのに」

「“ふーん”って、あんたね。ただ一緒に座ってたんじゃないのよ? 腕を組んでたんだから……」

「あ、そう」


思わせぶりな言い方をしても、ちっとも感心を示さない剛史に、母親はイライラした。


「加奈子はね、香川さんを振って嶋田君と付き合ってるんだって。しかも来月から家を出て一緒に暮らすそうよ。どう、びっくりでしょ?」

「別に……。俺、知ってたから。それより何か食い物ない? 腹減った」