素敵な上司とキュートな部下

加奈子はすぐに頷くと、両親を真っ直ぐに見た。


「それと、この家を出て二人で暮らす事も許してほしいの」


これにはさすがに両親は慌てたようだ。


「結婚をしないでか?」

「はい。結婚は何年か先になると思うわ。ね?」


と加奈子が言うと、大輔は「はい」と答えた。


「なぜ?」

「ちょっと事情があるの」


その事情を言うと、両親が心配もしくは反対されるかと思い、出来れば言いたくない加奈子だったが……


「僕が会社を辞めて学生に戻るからです」

「なに?」


大輔は臆する事なくキッパリと言い、加奈子が予想した通り、父親の表情が急に険しくなった。


「それはどういう事かね?」

「はい。思うところがありまして、大学に復学してやり直そうと思ってます」

「将来の展望はあるのかね?」

「はい。それは大丈夫です」

「うーむ……」


(あちゃあ。許してもらえないかも……)


そう思った加奈子だったが、


「ま、仕方ないだろうな」


と父親は言い、むしろ加奈子は呆気にとられた。