素敵な上司とキュートな部下

「そこはスルーして私の話を聞いてほしいの」

「そう言われると余計に気になるなあ。“そこ”って何なんだ?」

「スルーします」

「うーむ。嶋田君、後でこっそり教えてくれないかな?」

「あ、は……」

『ダメ!』


またもや加奈子と母親がハモり、大輔は可笑しくて笑いを堪えるのに必死だった。


「もう……。お母さん、私の話を聞いて? お父さんも」


両親が頷くのを見て、加奈子はもう一度話を切り出した。


「実は私……だいぶ前から香川さんとはお付き合いしてません」


母親も父親も、呆気に取られたらしくキョトンとした顔をした。そして数秒経ってから、


「どうして?」


と母親が言い、父親は驚いた顔で加奈子を見つめた。


「私が本当に好きな人は、香川さんじゃないからです」

「という事は、まさか……」


両親の視線は大輔に移った。


「はい。今はこの人と付き合ってます」


そう言って加奈子は、大輔の腕に自分の手を添えた。