素敵な上司とキュートな部下

「お母さん、お父さん。実は……」


と加奈子が話を切り出すと、まだ何も言っていないのに、


「私は何も見てないから。何も知らないから……」


と、母親が視線を逸らしながら言った。


「お母さん……?」

「おい、加奈子はまだ何も言っとらんじゃないか……」


うんうん、と加奈子は頷いたのだが、


「人は誰しも間違いを犯すものよ。弾みとか、若気の至りとかでね。でもそれを反省して、二度と繰り返さなければいいと私は思うの。だから、改まって話し合う必要はないと思うわ」


それを聞いて加奈子と大輔は母親が何を言いたいのか分かった。しかし状況を知らない父親に分かるわけもなく……


「おまえが何を言ってるのか俺にはさっぱり分からん。“間違い”とか“弾み”とか“若気の至り”とか、どういう意味だ?」


それに対して母親は答えようとせず、


「何の事だ、加奈子?」


父親は加奈子に振ったが、加奈子も赤い顔をして黙ったままだ。


「嶋田君……?」


仕方なく大輔に振ると、


「あ、それはですね……」

『言わないで!』


加奈子と母親は同時に大輔の口を封じるのだった。