素敵な上司とキュートな部下

「加奈子さん、こうなったらご両親にちゃんと話すしかないですよ」

「そ、そうね。そうしましょう」

「ブラ、直さないと……」

「う、うん。大輔も、口に私のリップが着いてるから」

「あ、はい」


とぼとぼ、という感じで階段を下りる加奈子と、平然として、むしろ可笑しそうに笑みを浮かべる大輔。


二人がリビングへ行くと、庭木の水遣りを終えた父親が、ゆったりとソファーに座って新聞を広げていた。母親はと言うと、加奈子達を見て慌ててどこかへ行こうとした。


「お母さん」

「な、何?」

「どこへ行くの?」

「どこって……。ああ、洗濯物を干そうかな、なんて……」

「それは後でいいでしょ? 話があるから座って?」

「そんな事言ったって、あなたは出掛けるんじゃないの?」

「いいから、座って?」


そんな、妻と娘の妙な空気を察し、父親は新聞を置いて顔を上げた。


「おはようございます」

「あ、おはよう。確か君は、嶋田君、だったかな。剛史の後輩の」

「はい、そうです」


母親が渋々といった感じで父親の横に座ると、その向かいにピタッと寄り添うようにして加奈子と大輔が座り、それを見て父親は、キョトンとした顔をした。