素敵な上司とキュートな部下

大輔はクルッと前を向き、目を大きく見開いた。


「ま、マジですか?」


加奈子が赤い顔で「うん」と頷くと、大輔はグラスが乗ったローテーブルをスーッと横にずらした。何をするんだろう、と加奈子が思っていたら、大輔は体を前に乗り出し、加奈子に抱き着いた。


「し、嶋田君?」

「嬉しいです。俺、いや僕も……」

「“俺”でいいわよ?」

「あ、はい。俺も主任が好きです。大好きです。主任を部長に取られたと思って、悔しくて悲しくて、飯も喉を通りませんでした」

「これからはちゃんと食べて?」

「はい。あの、こんな事聞いていいかわかんないですけど……」

「なあに?」

「主任は部長と、その……エッチしたんですか?」

「してないわよ?」

「じゃあキスは?」

「それもしてないわ」

「ほんとですか? よかった……。そういうのを想像したら、気が狂いそうでした」

「私もよ」

「え? どういう事ですか?」

「私も嶋田君と桐谷さんが……って思ったら、悲しかった」

「なんで桐谷と俺が? あ、もしかしてあいつに何か言われたんですか?」

「ううん。私が勝手に想像しただけ」


加奈子は、美由紀が色々と画策した事を大輔には言わない事にした。美由紀は失恋して可哀相な状態だし、加奈子には彼女を憎む気持ちが全くなかったから。