素敵な上司とキュートな部下

「そういう事って、どういう事?」

「さっき桐谷からメールが来たんです。もうすぐ主任がそっちへ行くから、死にそうなフリをしろって」

「まあ」


(それで嶋田君はさっき、“本当に来た”って言ったのね……)


「訳わかんないし、死にそうにしてたらドアを開けられませんからね」

「確かに……。あの子ったら、私を騙したんだわ」

「そのようですね。俺としては歓迎だけど」

「え?」

「いやあ、あはは」


大輔は照れながら白い歯を出して笑った。久しぶりに見る大輔の爽やかな笑顔に、加奈子は嬉しくて胸がキュンとなった。


「ねえ。桐谷さんは他に何か書いてなかった?」

「他にですか? 別に何も……」

「そうか……」


(私が香川さんと別れた事も伝えてくれれば良かったのに……)


「実はね……」

「はい?」

「私、香川部長とお付き合いするの、やめたの」

「えっ? マジですか!?」

「“マジ”よ」

「どうしてですか?」

「それはね」

「はい」

「ん……恥ずかしいから向こうを向いて」

「はあ?」

「後ろを向いて。そうしてくれないと言わない」

「わかりました。こうですね?」


大輔は上半身をクルッと捻り、加奈子に背中を向けた。それでも加奈子は恥ずかしくて、顔を真っ赤にしながら言った。


「あなたが好きだからよ」