素敵な上司とキュートな部下

「あ、本当に来た……」


ドアからひょっこり顔を出した大輔が、放った言葉はそれだった。その言い方に引っ掛かるものはあったが、それ以前に大輔が無事でいてくれた事にホッとする加奈子であった。


「し、嶋田君。生きてたのね? 良かった……」

「はあ? ま、とにかく入ってください」

「ううん。私は嶋田君の様子を見に来ただけだから……」

「そう言わずに、外は暑いですから、早く」

「う、うん。じゃあ……」


本当はそのつもりで来たのだが、仕方なくといった感じを装い、加奈子は大輔のアパートへ足を踏み入れた。アパートの中はエアコンが効いてひんやりしていた。


「これなら熱中症の心配は要らなかったわね……」


思わずそう呟く加奈子だった。


「散らかってますけど、そこに座ってください」

「あ、はい」


加奈子は大輔に言われ、座り心地の良さそうなソファーに腰掛けた。そうしながらさりげなく室内を見渡したが、散らかってるどころか、きちんと整頓されていて加奈子は関心した。


「何か飲みますか?」

「そうね、水をいただけるかしら?」

「水でいいんですか?」

「うん。喉が渇いちゃって……」

「わかりました」


大輔はグラスに水と氷を入れ、加奈子の前に置いた。


「ありがとう」

「いいえ」


加奈子は早速水をゴクゴクと飲んだ。汗をいっぱい掻いたため、本当に喉が渇いていたのだ。


「ふー。ところで嶋田君。君、元気そうね?」

「そうですね。夏風邪を引いちゃったんですが、もう治りました。明日から出社するんですけど、桐谷から聞いてませんか?」

「ぜんぜん。それどころか、嶋田君が死にそうだって聞いたわ」

「ああ、そういう事だったんですか……」