「美由紀ちゃん?」


と加奈子が声を掛けると、美由紀は顔を上げたが、今にも泣き出しそうな悲しい顔をしていた。


「金魚が死んじゃったんです」


唐突に美由紀はそう言った。


「金魚?」

「花火大会の日に、先輩にすくってもらった金魚です」

「ああ……」


加奈子は思い出した。花火大会の日に、金魚すくいで大輔がすくった一匹の金魚を、美由紀が嬉しそうに持って帰った事を。


「父が言うには、私がエサをあげ過ぎたせいだそうです。私の愛情が行き過ぎたんだ、って……」

「そう? それは可哀相ね?」


と返しながらも、加奈子は内心首を捻っていた。金魚が死んだぐらいで、この子はこんなに悲しそうな顔をするのか、と。


「部長さんから叱られました」

「え?」


またもや唐突な美由紀の言葉に、加奈子はキョトンとした。金魚と香川と、どんな関係があるのだろうか、と。